大判例

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東京高等裁判所 昭和42年(ネ)1409号 判決

以上みたところ……によれば、本件手形は、控訴人の主張にかかる金員貸付をその振出の原因とするものではなく、その記載の振出日ごろ被控訴人が藤田らとなした麻雀賭博により藤田に対し負担するに至つた債務約七〇万円を支払うため被控訴人から藤田に対し振出されたものと推認され、また右債務が賭博において被控訴人より藤田に対し支払勘定となつたもののみであるか、藤田以外の者に対する賭金支払のため藤田から借受けたり立替支出を受けた分を含んでいるかは確定し難いが、後者であつたとしてもそれが賭金支払目的であつたことは藤田の充分了知するところであつたと推認されるのである。そうしてみれば、被控訴人の本件手形の振出は、同人の藤田に対する賭博による債務決済についての合意を原因とするものであり、かつその合意は公序良俗に反する無効のものといわねばならない。

ところで、右のごとく手形行為における当事者間の原因関係が不法で無効であるとの事由は、爾後の手形取得者に対しては、その取得が満期後である等の場合を除き、いわゆる人的抗弁として取得者悪意の場合に限り対抗できる事由と解すべきであるから、前述のように藤田から受取人白地の本件手形を取得した被控訴人の、右取得当時における悪意の有無について検討すると、当審における控訴人本人の尋問の結果によれば控訴人は本件手形が振出される以前から妹の夫である藤田の自宅において被控訴人と面識があり、藤田は麻雀好きで被控訴人が藤田らと麻雀をしていることを知つていたこと並びに本件手形の振出が被控訴人の藤田に対する債務支払のためであることを知つていたことが認められ、これらと、本件手形振出の経緯に関する控訴人の主張につき前項で検討したところ並びに原審および当審における被控訴人本人の尋問の結果を総合すれば、控訴人は本件手形が被控訴人の麻雀賭博によつて生じた債務支払のため振出されたものであることを知つてこれを取得した者であると認めるのが相当である。右に反する原審および当審における控訴人本人の尋問の結果は信用することができない。そして、控訴人においてかかる認識を有していたと認められる以上控訴人は前記の本件手形振出の原因関係につき悪意の手形取得者であるといわねばならない。

(小野沢 田中 大石)

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